COLUMN

生物が放つ光

草にとまって光る蛍の画像

6月になり、お米農家では田植えの準備が始まりました。米不足で日本中が大変ななか、豊作を願わずにはいられません。ちょうど二十四節気では芒種の時季。古来より種まきの目安とされており、種を蒔いた植物がぐんぐん成長して実をつけていく様にかけて物事を始めるのに縁起が良い時季とされてきました。

6/10~6/15頃は芒種第二十六候で「腐草為蛍(くされたるくさほたるとなる)」と言って蛍が舞う時季を指しています。昔の人が暑さで腐った草の根が蛍に変わると信じていたことに由来しているとか。蛍は儚いけれど優しく、見る人の心を穏やかにしてくれる光を放ち、夏の夜に涼を感じさせてくれます。

蛍が飛び交う画像

光るのに熱を感じない理由は、蛍の光は炎や電球と異なり、熱放射を伴わない「冷光」と呼ばれる光だからです。蛍はおしりに近い部分にある発光器内にルシフェリンという発光する物質と、発光を助けるルシフェラーゼという酵素をもっており、これらの物質に蛍が体内に取り入れた酸素が反応して発光します。

このルシフェラーゼは生き物が体内で作り出すたんぱく質であり、発光効率がよいため電球などのように、光にならなかったエネルギーによる熱放射がありません。そのため、涼しげに感じられるのかもしれません。

また、ルシフェラーゼは蛍によってその性質が異なるため、ルシフェリンと反応した際の発光色にも黄緑色、黄色、赤色などの違いが生じます。

蛍以外にもクラゲやホタルイカなどをはじめ、発光する生物は数多く存在しています。2008年にノーベル賞を受賞された下村脩氏が発見したオワンクラゲの緑色蛍光たんぱく質(GFP)は、研究者が調べたいたんぱく質を細胞の中で光らせることができる技術に応用されています。蛍の発光の仕組みも研究段階ではあるものの、発光物質を利用して病気の患部を見つける研究や防災分野への技術開発が進められるなど、生物の小さな光にも大きな可能性が秘められているようです。生物に負けないよう、当社も光の可能性を広げる技術開発に取り組んでまいります。