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五鈴精工硝子の“職人技”が生み出す高精度レンズ

光学機器や医療分野をはじめ、さまざまな最先端分野で欠かせない存在となっている「成型レンズ」。その製造現場では、職人の高度な技術が今なお重要な役割を果たしています。
今回は、五鈴精工硝子で20年以上にわたりロットプレスによる成型レンズ製造を担うベテラン技術者に、手作業ならではの“成型レンズ製造の真髄”についてインタビューしました。

■成型レンズ製造技術の“中核”とは?

成型レンズ製造現場

五鈴精工硝子では現在も、一部の成型レンズ製造において手作業が欠かせません。その中心となるのが「ロットプレス」と呼ばれる工程です。

「ロットプレスとは、棒状(ロッド)のガラスを炉で溶かし、溶融したガラスを金型でプレスして成型レンズに仕上げる作業です。昔は片面成型が主流でしたが、現在は高品質な両面レンズのニーズが高まっており、手作業による微細な調整が欠かせません」と語ります。

現在では、自動成型機の普及によりこの工程を手がける企業は限られていますが、高精度な両面成型レンズを安定して製造するには、いまなお職人の技が求められています。

 

■品質を左右する「ガラス量」と「プレス技術」

成型レンズ製造において最も重要なのは、「ガラスの量」と「均一なプレス技術」です。

「両面成型は適切なガラス量を確保しなければ、不良品が発生しやすいんです。昔の片面成型時代は“ギリギリ”のガラス量で生産効率を求めていましたが、今は品質重視。1枚1枚、緻密な計算が必要になります。」

こうした微妙な調整を支えているのは、職人の手と目による感覚と経験にほかなりません。

 

 

■厳しい環境下でも“技術”が光る

成型レンズの製造現場は、夏場には室温が50℃近くにも達します。スポットクーラーを使用しても、現場は常に“暑さとの戦い”です。

さらに、近年ではロッド(棒状のガラス)そのものを製造するメーカーが減少し、調達も難しくなってきています。

「今は太めのロッド(棒状のガラス)を仕入れて、手作業で先端を溶かしながら細く加工しています。小径レンズの需要が増えているので、より高い技術が求められます。」

高精度な成型レンズは、こうした現場の工夫と職人の努力の積み重ねによって生み出されています。

 

■“職人技”と“自動化”の両立

成型レンズの品質を安定させるためには、常に「同じタイミング」「同じガラス量」でプレスを行うことが欠かせません。

「作業のリズムが重要なんです。でも、気温や湿度によってガラスの状態は微妙に変わります。同じ条件で打ってもうまくいかない日もあります。そんな時は職人の“感覚”で微調整しています。」

ロボットでは再現できない「手」の感覚。そこには確かな職人技が息づいています。

 

■「子供のような存在」――成型レンズへの想い

最後に、成型レンズ製造への想いについて尋ねると、こんな言葉が返ってきました。

「自分が打ったレンズは、すべて子供のようなもの。不良品はないと思っています。」

だからこそ、最後は必ず目と手で一つひとつ確認し、品質を保証しています。気温や湿度、さまざまな条件の違いを超えて、安定した品質を支えているのは、職人の誇りと経験なのです。

これからも技術を継承しながら、より高品質な成型レンズをお届けし続けてまいります。

成型レンズ製造工程